2004年11月27日
奇跡のカレー
私が以前所属していた設計事務所では、スタッフが持ち回りして、夕食を人数分調理していた。ある日、私たちはコンペの〆切で忙しく、夕食を調理する余裕がまったくなかった。そんなとき、私たちの上司にあたるEさんが料理してくれることがよくあった。私は彼が冷蔵庫からゴミのような野菜を取り出してテーブルの上に並べているのを横目で見ていた。キャベツの芯、シナシナのレタス、干からびた人参、たくあんのようになった大根、半分にカットされた芽が出ている玉葱etc、とにかくひどいクズ野菜ばかりで、量も少く到底全員の分はなかった。彼は米を炊き、カレーを作ってくれた。
私たちは一瞬手を休め、カレーを食べた。あの材料でカレーが調理されたことも信じがたかったが、この旨さは奇跡だった。カレーの量は米の量と比べると少なかったその分味付けが濃くなるようにスパイスがバランスよく調合(この事務所ではカレー、ソース、焼肉のタレなどは原則自分たちで、醤油や酒、スパイスなどを調理調合して作っていた)されていたのだろう。ただそれだけかも知れないが、食事が出来るまでのコンテクスト、スタッフの精神状態、Eさんはそういったことまで配慮して作ってくれたのだ。本当にあの時のカレー味は忘れられない。
昨日、友人はカレーの話をした。クズ野菜の話もしていたと思う。夕方彼女を駅まで送った帰りに、スーパーで挽肉を買い、家にあった玉葱とでカレーを作った。それを食べながら、私はあの奇跡のカレーを思い出して幸福な気持ちになるのだった。
カテゴリー:料理 | コメント (2) | 投稿者:hyodo
コメント
hyodo
そうですよね。雰囲気や気分は味覚を左右します。
感激する料理は、美味しいことがまず前提条件ですけど、それをどうやって相手の心に響かせるのか、それが本当の料理のスパイスなんでしょうね。
2004年11月28日 @ 12:24 AM
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猫
忘れられない味ってあるよね。
きっと、その場の雰囲気とかその気分とかでも味ってすごく左右するもんね。
親子丼たべたいときに、ミッシュランのシェフがわたりがにのリングエネつくってもね~って・・・
2004年11月27日 @ 9:35 AM