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2005年5月3日

オレの勝負服!!~秋から冬~

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以前の記事でも申し上げたが、私はひとり寂しく建築設計の仕事を自宅でしている。ここでの仕事着(と言っていいのかどうかはわからないが)は、襟付きのシャツにアウトドア系のパンツである。シャツは極めて普通であるので、ここではあまり取り上げないことにする。問題はパンツである。なぜアウトドア系かというと、大抵、腰紐やベルトが一体となっているのでベルトを通す必要がなく、椅子の上で片足だけ正座したりあぐらかいたりするのに、楽で動きやすいからである。

昨秋、2本目のクライミングパンツを買った。冬が近づいていたので、少し暖かな厚手のものが欲しくなったのである。色は茶の地に黒のラインのチェック、素材はコットン、ウエストベルト付き。 gramicci というアメリカのアウトドアアパレルメーカーの製品である。昨年中央アジアを旅行したときにこのメーカーのショートパンツを持って行ったのだが、履き心地・耐久性・形等とても気に入っている。

外出するときは、大抵 agnes b の定番ジーンズに穿き替える。素材が薄く柔らかく、洗濯による経年変化が良い感じで、形は少し細身の普通のストレートである。仕事で打合せに行くには、リーバイスだとくだけすぎだが、agnes b のジーンズならいいような気がしている。別にagnes bというブランドにこだわりは無く、同じような製品が他社にないのである。だからパンツ以外の agnes b 製品は買ったことが無い。

昨秋、私はお茶を習いはじめた。お稽古の時は正座が基本で、お辞儀したり立ったり座ったりを繰り返す。お茶のお稽古は仕事ではないが、少しフォーマルな場のような気がしていたので agnes b のジーンズを穿いて通っていた。しかし細身のジーンズは正座には向かない。足が痺れやすいのである。それを見かねて先生が、

「hyodoさん、細身のおズボンはちょっと大変じゃないかしら?

「もう少しゆったりしたものを穿いていらしたら」

とおっしゃってくれたので、その後は例のクライミングパンツを穿いて通うことにした。しかしお稽古の時はいつも同じそのパンツなので、

「hyodoさん、そのおズボンはお稽古用なの?」

と今度は聴かれた。先生は『ちょっと悪いこと聴いちゃったかしら』と思われたようで、

「Kちゃん、あなたもhyodoさんみたいなズボン穿いてくればいいのよ!

「hyodoさんに教えていただいたら?」

などと他の生徒さんに声をかけたりして、私に気を使って下さったようだ。

私は月に2度ほどウィーク・デーに東京都心の裏通りや古い住宅地を散歩をしている。散歩に出かけようとしていたある日、玄関で母に呼び止められた。

「あなた、それで出掛ける気?」

「何で?」

「そのズボン・・・」

「散歩だしね。靴もトレッキング用だし・・・」

「デートじゃないの?」

「変かな?」

私は気にせず散歩に出かけたが、散歩パートナーはどのように思っているのだろうか?

どうも評判が悪い私のクライミングパンツ。それでも先日、薄手の春夏ものを買ってしまった。もちろん勝負服ではないが、この世との間に誤解が生じ「勝負服」と呼ばれるようになってしまった。こうなったら徹底的に自分を戯画化して楽しもう!現在シリーズ化を検討中(笑)

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カテゴリー:雑記 |  コメント (5) |  投稿者:hyodo

2004年11月18日

オレの勝負服!!

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私はひとり寂しく建築設計の仕事を自宅でしている。その場合の仕事着(と言っていいのかどうかはわからないが)は、襟付きのシャツにアウトドア系のパンツである。シャツは極めて普通であるので、ここではあまり取り上げないことにする。問題はパンツである。なぜアウトドア系かというと、大抵、腰紐やベルトが一体となっておりベルトを通す必要がなく、椅子の上で片足だけ正座したりあぐらかいたりするのに、動きやすいからである。ただし見栄えはあまり良くない。そのパンツの中にグレーのクライミングパンツがある。素材が合成繊維なので、軽く洗濯してもすぐに乾く。私は結構気に入っている。

独立する前に勤めていた設計事務所に行くときもそのクライミングパンツを穿いて通勤することがあった。その日、私はグレーのMUJIのシャツとそのパンツで、上下ともにグレーという出立ちだった。私より若い女性スタッフ2人にその服装について指摘を受けた。

「hyodoさん、その服装相当ヤバイです」
「え?そう?どうせ一日中事務所だからいいじゃん」
「でも、出会いがあったらどうするんですか?」
「絶対にない」
「出会いはなかったとしても、知り合いの女性に会うかもしれませんよ」
「それもない。今日もひとりも会わなかった」
「どうやら私たちは女性じゃないみたいね・・・」
私は形勢の不利を感じ、その場を取り繕おうとした。
「これがオレの勝負服なの!」

ことばを発したとたん、更に落ちていくのを感じたが、もう手遅れだった。「勝負服!」「勝負服!!」それ以降そのパンツを穿くたびに馬鹿にされるようになった。

独立後すぐにヘアサロンの店舗設計をする機会があった。工事が無事終わり、開業前の準備を手伝いに行った。私は軽トラックでプラチナ通りのその店に乗りつけ、荷物の上げ下ろしをした。店内にはWさん夫婦のほかに女性スタッフが2人いた。みんな小奇麗な実にヘアスタイリストらしい服装で、シャンプーやカラー材などの色鮮やかなパッケージを運んだり、並べたりで忙しそうだった。荷物の搬入が終わり、W氏は私をスタッフに紹介した。

「えーと、この人がこの店のデザインをしてくれたhyodoさん」
「えっ?(運送業者か引越し業者かと思ってた)」
と聞こえた。彼女たちはそれまで、私に荷物を置く場所を指示していたので、少しバツが悪そうだった。ようやく同じ立場の人間として扱ってもらえた。その日も私はグレーのMUJIのシャツと例のパンツという格好だった。

サリンジャーの「ゾーイー」という小説の中で、ゾーイーの母親ベシーが着ているキモノの家庭着の描写がある。キモノなのに特大ポケットが付いていて、更にその中には煙草、金槌、ナイフ、蝶番などがはいっており、とにかく見苦しい。それを何とか捨てさせようと、娘たちが画策したりもしたが、未だにそれは実行に至っていない、という場面のことである。

先日、この小説を読んで、大いに共感するところがあった。私はベシーとそのキモノを応援し、未来永劫を祈った。しかし、もう少し服装に気をつけたほうがいいかもしれないと初めて思った。

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カテゴリー:雑記 |  コメント (4) |  投稿者:hyodo

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