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関口酒造母屋リノベーション

約120年前に建てられた埼玉県杉戸町にある酒造母屋(古民家)のリノベーションです。

江戸時代に栄えた旧日光街道の杉戸宿新町に位置し、古利根川がこの宿場町に沿って流れています。通りには古い町家がいくつか残っており、関口酒造の母屋は保存状態が良く、事務所と住居として使われています。

ファサード

補修・復元は最小限に留める方針を取りました。建具、雨樋は交換せざるを得ないので交換しましたが、古い木部は清掃し、瓦はズレを直し、棟や軒先の漆喰の補修するなどの補修をベースとしました。それだけでも建物は生き返りました。

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事務所・土間から通りを見る

格子戸から通りの様子が伺えます。天井の梁はケヤキです。汚れを丁寧に清掃しました。床はタモフローリング、土間は墨入りモルタルです。2階へ上る階段を新設しました。

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土間・事務所から住居エリアを見る

半透明の建具の先が住居エリアになります。半透明の素材はポリカナミを使用した建具で、和障子と縦格子戸の中間的な表現にしました。

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ダイニングからリビングを見る

新旧の素材が入り混じった楽しいダイニングとリビングです。どちらの室も外へ面する窓が少なく暗いので、梁から上の壁と高い天井をベージュで塗装し、天井面の間接光による照明計画にしました。正面の細かい手の込んだ縦格子戸は、真新しい空間にこの母屋のオーラが現れることを期待しリユースしています。

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リビング

改装前は畳敷きの室でしたが、居間としての使用をクライアントが希望したため、フローリングに変更しました。仏壇と神棚のある最も重要な場所であったので、フローリングへの変更は非常に悩みましたが、暗さを解消するための間接コーブ照明とモダンな天井の組合せにより、設えの格調が損なわれることはなかったと思っています。

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リビングから、土間、事務所を見る

ポリカナミを使った和障子と縦格子の中間のような建具を作り、パブリックとプライベートを仕切りました。外から入ってくる自然光とコーブ照明の間接光は抽象的な美しい光になりました。

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奥の和室から中庭を見る

リビングの奥に位置する和室です。改装は畳の交換と左官の塗り替えに留め、建具はそのままリユースしています。縁側の大きなガラス引戸を通して中庭のデッキが見えます。改装前は中庭の場所に増築された部屋があり、縁側が暗くなっていたので、減築し明るい縁側にしました。中庭の先の窓は、寝室の窓です。

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中庭

幅一間の中庭に、軒が重なって掛かります。暗くならないように壁を白い漆喰にしました。正面はダイニングの窓になります。

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縁側

縁側は、昔の人が考えた建築的な空調システムを兼ねた半屋外空間です。できるだけ外が感じられるようにフルオープンの引戸にしました。縁側は渡り廊下を介して洋館へつながります。

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寝室

中庭に低い掃き出し窓を設け、ベッドの上に格子の天蓋がある落ち着いた寝室です。

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洗面室

天井は既存の梁を表しにしました。壁はヒノキ板張りで清潔感のある水回りです。

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2階 板の間から和室を見る

床と漆喰を新しくすることで、古い天井と建具がこれまでと違った表情を現し、生き返りました。

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夜のファサード

昼は、どっしりとした印象の建物が、夜は格子戸を通る光によって軽やかで繊細な表情になります。戸締りの雨戸は新調し、左右の戸袋に入っています。

改装前の様子

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改装前の母屋外観。保存状態は良かったです。建具と壁がかなり傷んでいました。

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改装前の事務所の様子です。

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改装前のリビングです。仏壇と神棚は改装後に移動していません。

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内部解体直前の建具を撤去したところ。建物に風が通り始めました。

工事の記録

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見掛りの梁・柱を傷つけないように丁寧に解体し、敷居や鴨居は一度外して保管しておきます。

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改装前に増築されていたエリアの土台はすべて入れ替えることになりました。

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縁側の新旧の下屋が接するところです。

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外壁が仕上がり、建具が入るのを待っているところです。

埼玉県川口市の一級建築士事務所 兵藤善紀建築設計事務所