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江戸の家

埼玉県川口市に計画した、ご高齢の夫婦のための平屋です。

デイサービスを受ける際の出入り・移動のしやすさ・室内で転んだ時に痛みの少ない床仕上げ・介護のしやすさなど、現実的な問題に取り組みながら、高齢になり体の自由がきかなくなってきても自立した生活ができる家を目指しました。

外観(上)

畑の中に建つ小さな片流れの屋根の平屋です。

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道路からポーチへのスロープ

道路から玄関までの高低差は約 60cm あります。スロープの長さを確保し、勾配を緩やかにするために、玄関の位置は敷地の奥にしています。その結果スロープ長は、5.4m とれましたが、それでも勾配は 1/9 が限度で少し急です。勾配 1/9 ではスロープで車椅子を押すと結構な力が必要になるので、本当は 1/12 は欲しいところです。手すりは特注でステンレスで製作しました。

玄関ポーチと玄関土間

玄関ポーチは車椅子の転回が十分できる広さにしています。玄関ポーチと玄関土間、玄関土間と床の段差は 各々 15mm 程度にして、車椅子での移動が楽になっています。

建物の外壁は、耐久性があり、メンテナンスもあまり必要としないガルバリウム鋼板です。色が濃いグレーで少し冷たい印象なので、玄関ポーチの軒下の外壁は、ミルクコーヒー色の左官、玄関引戸はヒノキにして暖かみを持たせました。

玄関土間と床の段差が 15mm しかないので、座って靴の脱ぎ履きができるように杉板のベンチを設け、手すりを設置しています。

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ダイニング・キッチンから玄関土間とリビングコーナーを見る

コンパクト家なので、動線を極限まで整理し廊下の無いプランにしているので、玄関から入るとすぐ LDK になります。床仕上げは、転んだ時の痛みを軽減するためにクッション性のあるコルクタイル張りにしました。

リビングコーナーの設備

リビングと言えるほど広いスペースが確保できなかったので、「リビングコーナー」という造り付けデイベッドを置いた小スペースを設けました。ベッド内部は収納になっています。窓には室内側に鎧戸を設けて、雨戸の代わりとしています。又、天井に昇降式の物干し竿を設置しました。

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ダイニングから寝室の仕切りを見る

ダイニングと寝室はシナベニヤで作ったクローゼットで仕切っています。天井と両袖はあいているため空間はつながって見え、広く感じます。平屋なので十分に天井を断熱し、部屋全体で 21畳程度のなので、エアコンは 2台設置しましたが、1台で十分に夏冬の空調ができているそうです。

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寝室のベッドコーナー

クライアントはベッドで過ごす時間が長いので、庭が見渡せる明るい場所をベッドコーナーとしました。昼寝の際に室内を暗くできるように鎧戸を設けています。

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キッチン

ミニマルなシステムキッチンをダイニングの一角に家具のように設置しています。「吊戸棚は使わない」とのことでしたので、畑が見渡せる大きな窓を開け、レンジフードは目立たない製品を選んでいます。電子レンジ・炊飯器は、テーブル脇に背の低いキッチン家具を置きその中にいれて使うとのことでしたので、事前にお使いになるキッチン家具の寸法を調べ、床にコンセントを設置しています。

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洗面室とトイレ

洗面室の入口は寝室から出入りできるようにし、洗面室とトイレの仕切りは、将来の介護に備え一体の空間として使えるように引戸にして取り外しできるようにしています。

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洗面室とトイレ

洗面室からトイレまでの移動が楽なように、木の手すりを設置しました。掃除のしやすさを優先し、床はクッションフロアにしています。

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浴室

シンプルで機能的なユニットバスを選びました。掃除のしやすさを優先し、オプションは極力設けないようにしています。そのためバリアフリータイプの浴室に標準装備されるカウンターもクライアントの希望により設置しませんでした。浴槽は保温性の高い仕様にしています。

埼玉県川口市の一級建築士事務所 兵藤善紀建築設計事務所