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2014年10月23日

横浜トリエンナーレ 2014 へ行ってきました

やなぎみわ
先日、横浜トリエンナーレへ行ってきました。子ども連れだったので、ゆっくりと観て廻れなかったのが残念でしたが、こころに残る作品が多くあり、このまま忘却してしまうにはとてももったいないので、記憶しておきたいと思います。

今回のトリエンナーレでは、テーマ「華氏451の芸術:世界の中心には忘却の海がある」に沿って、この展覧会のために新しく制作された作品だけでなく、ディレクター森村泰昌がテーマに沿って選んだ近現代の作品が多く展示されていたことに逆に新しさを感じました。ジョンケージの「4分33秒」の楽譜や、マグリットの写真作品、ウォーホルまで展示されているのですが、大御所の作品を拝見できて満足しましたというより、作品の存在や意外性を発見でき楽しめました。

忘れがたい作品をいくつか列記します。

マルセル・ブロータース「猫へのインタビュー」

作家と猫の対話の音声作品です。作家は猫に難しそうな芸術論だか哲学的認識の問題を投げかけ(カタログによると「ある絵画作品について愛猫と語り合っている」そうな)、それに猫が「ニャー」と答えるだけのナンセンスなコミュニケーションが楽し過ぎます。

福岡道雄「飛ばねばよかった」

何もすることがない
彫刻作品と平面作品のインスタレーションです。上の画像は、その平面作品なのですが、濃いグレーの地に白い小さな文字で夥しい数のテキスト「何もすることがない」が繰り返し書かれています。リズムと濃淡がまるで海の波を見ているようです。

Temporary Foundation「法と星座・Turn Coat / Turn Court」

法と星座・Turn Coat / Turn Court
法廷(Cort)とテニスコートを洒落と穴の開いたミラーで結びつけた作品です。意味深そうなアイテムがちりばめられ、トップライトのある円筒形の展示室の外にも牢獄と大きな青い椅子があり、展示の警備員がいたり(たぶん作品とは関係ないのだが、とても関係がありそうに見える)、なんだかぐるぐると走り廻りたくなってしまうようなインスタレーションです。デザインも非常に考えられていて、断絶と連続感がスゴイ。うちの子どもはここにいるときは楽しそうでした。
作家による解説はこちら > Temporary Foundation

ディン・キュー・レ「南シナ海ピシュクン」

波打つ海原に次々とヘリが墜落する衝撃的な映像作品。良く見ると、リアルな 3D-CG であることがわかります。物理エンジンを使っているかも。見ていて飽きません。子どももずーっと凝視していて、「行こう!」と声を掛けるまで見続けていました。昔、ドイツ・カッセルの現代アート展「documenta 10」で、「Hijack Horror」というビデオ作品を観たことがあのですが、ラストに次々と旅客機が墜落していくシーンがあり、目が離せませんでした。9.11 の衝撃的な映像は、誰もが繰り返し観たことと思います。共通するのは人が乗っていることはわかるのですが、その存在・気配の希薄さです。

メルヴィン・モティ「ノー・ショー」

エルミタージュ空中庭園
今回一番驚いた作品です。エルミタージュ美術館を舞台に言葉をつむぐ映像作品なのですが、鑑賞者がこの作品について何か語るのは難しいです。観て良く聴いて展示室の入口で配布されているブックレットを手にとって読んでみてください。
上記の写真は、10年前にエルミタージュに訪れたときに撮った空中庭園で、花も無く不在感があったので載せてみました。広大な宮廷内は絵画等でいっぱいで観て廻るのが大変で、私の場合ほとんど作品の記憶は無かったとだけ言っておきましょう。

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2008年11月7日

横浜トリエンナーレ2008

先日、横浜トリエンナーレに行って来た。面白かった作品を列記して見る。

平田晃久/イエノイエ
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運河パークに建つコンセプト住宅である。山並のようなグリーンの屋根は、外壁とシームレスにつながり、外壁は基礎も覆っているので、地面の草ともつながっているように見えなくもない。屋根は3つあるらしいのだが、建物はひとつである。建物内部には3つの舞台のような2階があり、それぞれが吹抜に面しているのだが、山並の屋根の谷によって分節され、微妙に視線やプライバシー等がコントロールされた一体空間となっている。2階の窓からはこの家の屋根が見えたりするのも面白い。各室は、若手有名建築家による、新しい住宅の提案が展示されているのだが、リビング、書斎、キッズルームなど名前を付けることによって、展示会場というより家であるという印象を与えている。

西沢立衛/新港ピアの会場構成
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3つあるメイン会場のひとつで、建物は倉庫のような感じである。内部の会場構成を建築家の西沢立衛が担当している。展示室の壁(高さ3~6m程)を展示面のみ白く塗装して仕上げて通路となる裏面は仕上げをせず、スチールの柱と下地、不燃ベニヤを露出させいるだけなのだが、その舞台裏を見せるコンセプトが新しい感覚を観賞者に与える。現代アートの展示は作品を認識することが難しいことがあるが、ここには観賞者が作品に向き合えるような工夫がある。すなわち白い壁–>展示室、舞台裏–>非展示室という単純だが明確なフォームにより、観賞者は舞台裏から舞台に出演していく俳優のような気分になれるからだ。

ウラ・フォン・ブランデンブルグ/作品名不詳
白黒16mmフィルムの作品。古い屋敷の各部屋にストップモーションのように動きを止めた人々がいて、その様子を人が視点を動かすようなシークエンスでカメラがワンカットで捉える。フィルムはループするので、ワンカットのシーンが永遠と続く。出演者の一人に白いリボンをメビウスの輪のように手に絡ませた男がいる。映像作品なのに被写体は静止し、カメラは動き回る。カメラは観賞者の視点なので、観賞者はいつしか映像に入り込んでしまい、奇妙なリアリティーを感じるようになる。

ペドロ・レイエス/Baby Marx
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人形劇のビデオ映像作品。今や忘れ去られた社会主義の歴史的思想家・政治家たちを人形劇のパロディーで紹介する楽しくかわいらしい作品。マルクス、エンゲルス、レーニン、チェ・ゲバラ、毛沢東、スターリン、アダム・スミス、フレデリック・テイラーが登場する。映像は最後に”Baby Marx, Bring on the Revolution!!!”とテロップが流れ”coming soon”で終わる。僕はこの人形劇の本編が今後作られるという意味で”coming soon”を捉えたが、妻は「Baby Marxが現れ革命を起こす日は近い」と解した。なるほどその方が深い。登場人物の是非はともあれ、またパロディーとはいえ、マルクス、エンゲルス、レーニン、チェ・ゲバラ、毛沢東は社会主義思想の歴史的人物として扱われ、スターリンは単に残忍な独裁者、アダム・スミスやフレデリック・テイラーはグローバル化や管理社会を推し進めた人物として捉えられている。そのように解釈すれば最後のメッセージは、「社会主義は終焉したように思われているけれども、今や終焉をを迎えているのは資本主義であって、マルクスの子どもたちが社会に変革を与える日は近いであろう」という作者の希望が見えてくるのである。

Baby Marx(You Tube) はこちら

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2005年11月5日

横浜トリエンナーレ

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横浜トリエンナーレ2005は、アートが本来持っている機能、その醍醐味を提示する3年に一度の大規模なアート・イベントです。しかし第2回の今回は、前回から4年がすぎてしまいました。そんなことはどうでもいいです。私は先週末行ってきましたので、気になったアーティストをご紹介します。

さわひらき
壁や家具など室内のあちこちに歩くラクダの影が落ちるという楽しいビデオ作品。以前の記事でも紹介したが、このアーティストの作品はメッセージが希薄に見える。しかし、よく観察すれば身近で限られた世界といえども、いかに広大であるのかを教えてくれる。「楽しみは手を伸ばせばそこにある」ということをその人間の個人の精神性の問題ではなく、物理的にも手に入れられるんだよと、そのコツを私たちに示してくれているのだ。

ボートピープル・アソシエーション
入口近くにある艀(はしけ)。海に浮かんでいるので波で揺れる。中に入ると船底は砂利敷きになっていて、ソファーがあちこちに置かれている。ソファーに座ると、見える外の景色は空だけ。ただそれだけなのだが、なんだか気持ちいい。波に酔って気持ちがいいのかもしれない。

前回、2001年の方が刺激でした。ピピロッティ・リストやフィオナ・タンの映像作品が面白かった。今でも心に残っているのは、オランダのファッション・デザイナー Victor & Rolf のファッション・ショーの映像作品でした。

私が Victor & Rolf のブースに入っとき、映像は最初からではなく途中からでした。スクリーンには黒服を着た女が写し出されていました。その女はほとんど黒目が無く、白目がやたら目立ち、上目遣いでこちらをにらみつけていました。黒人とも思えないのに、黒い顔、手、髪。着ている服も黒で、一見モノトーンの映像のようにも感じました。画面の女がカメラの前を通り過ぎると、別の女が同じようなすごい形相でこちらを上目遣いでにらみながら登場したのでぎょっとしました。しばらくの間なんの映像だか判らないままスクリーンを眺めていました。ファッションショーの光景だと判るまでに4人の女が画面を通り過ぎました。

ショーの様子を伝えるフレーミングは3、4カットのみ、BGMは4小節の旋律を少しずつ音量を上げてボレロのようにアレンジを変化させリフレインします。服は全てクラシカルな黒服で最後のウエディング・ドレスまで黒。黒なのは服だけでなく、皮膚、髪も黒、瞳も黒。会場の壁、天井まで黒。細い舞台とモデル達が登場する入口の周りは白で黒服を際だたせ、一方通行の舞台を歩くモデルは無表情で冷たく、キメのポーズはまるで能のように微妙で無駄が無い。すべてに行き届いてスキが無く、その厳しさは見るものを寄せ付けないどころか、観客など無視しているかと思うほど。これほどかっこいい映像は他に見たことありません。この作品はまた見てみたいです。

今日の写真 ~カラフル その10~
前回の記事で、最後といいましたが、あと2、3枚続けます。今回は、京都妙心寺(だったと思う)。カラフルなお寺の暖簾(なんていうのですかコレ?)

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