2004年12月の記事

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2004年12月7日

シフォンケーキ恋心編

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私はレモンを鉢植えで育てている。今年はたくさんの花が咲き、6月ごろは部屋中がレモンの花の香りで満たされていた。花が落ち実が生った。その実を使ってシフォンを作ってみた。無農薬なので皮も安心して食べられる。さわやかな風味であきのこない美味さ。いろいろなフレーバーで試してみたが、結局レモンシフォンに落ち着いた。国産レモンも今それほど高価でないので、お試しいただきたい。

話は変わるが、レモンというのは新鮮さや恋のイメージがある。

「これはレモンの香りですか?」タクシーに乗った客が運転手に尋ねる場面から始まるエッセイ。なだいなだ氏の著作だったと思う。確か小学校3年の国語の教科書に載っていた。読んだだけでレモンの香りに包まれ、酸味を想像すると唾液が出てきた。
※追記:その後この本は、「白いぼうし」(あまんきみこ著)であることが判明。失礼いたしました

梶井基次郎の「檸檬」。かつての恋人が送ってきた小説である。

去る夏、私は彼女の住む山奥へ会いに行った。なんだかとても神聖な旅行のような気がして、彼女のところへ行く前に、伊勢参りをした。俳句も納めた。そして彼女に会った。滞在中は誰も知らないような美しい山や川へ連れて行ってもらった。ある有名な観光地で喫茶店に入った。彼女は氷小豆を、私はレモンスカッシュを注文した。彼女は、どうしてレモンスカッシュを頼んだのかと僕に尋ねた。そしてそれがとても気に入ったと言った。

そのころ彼女も私もパートナーが別にいた。それでも私ははっきりと意思を伝えたが、彼女は首を振った。

ひと月ほどして彼女から葉書が届いた。裏には、ふたりで訪れたあの観光地を背景に、浴衣を着た女がレモンスカッシュをストローで飲んでいる絵が描かれていた。そして白地の部分にひとこと「わたしもマネすることにしました」と走り書きがあった。その日夜遅く帰宅した私は、浴槽に浸かりながら(普段はそんなことしないのだが)その葉書の絵を眺めていた。何度か繰り返して読み、その意味するものを確信した。

その後時々彼女はレモンのことを話題にした。そして梶井基次郎の「檸檬」を見つけて気に入り、私に送ってきたのである。

レモンのシフォンは、プレーンシフォンにレモンの風味を加えただけのものである。レモン汁はレモン半個分以上入れてはいけない。メレンゲが壊れるからだ(宇宙の崩壊である)。風味付けに皮を削って入れる。これも半個分以下。レモンは少し感じる程度で十分伝わるのである。

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2004年12月4日

牛腸茂雄 “SELF AND OTHERS”

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今年一番の写真(上の写真のことではないですよ)。10月に三鷹市美術ギャラリーで見た。

“SELF AND OTHERS” は全部で60枚からなる連作である。それら全てがポートレイトである。写っている人物はどれもはかなげで、弱々しい。日常の中で撮影された単なる記念スナップのようでポーズもとっていない。しかしここまで作為が感じさせずに、人と向き合い目を合わせることが出来るのだろうか?しかもどれもが真実を感じさせる。何が真実か?それは牛腸と被写体との関係が真実なのである。両者の間には見せかけや作為が感じられない。写真が作品として、特にアートとして捕らえられるとき、何がそうさせるのかと常々考えてきたが、真実性は重要な要素であることは間違いないだろう。

世の中のポートレイト写真のほとんどは真実を写していない。たとえば、広告写真のたぐいなどである。楽しげな笑いやポーズ、もの悲しい横顔などなど、演技であることがわかってしまう。

私も被写体と向き合いながら真実を捉えたことがあるように思う。しかしそれは15年間で2,3枚しかない。牛腸が短い生涯の中でこのような写真が60枚も撮れたことは奇跡としかいいようがない。

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2004年12月3日

本日・・・

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今日は、個人的に思っていることを簡単に綴ることにします。読者の方は、文を無視して写真だけ観てください。
どうも仕事が手に付かない。ブログに熱中しすぎだ。何とかしなければ。
なんだか、いろいろなところで誤解を受けているような気がする。
今日は微妙な闇のようなものを見つけてしまった。しばらくは誰にも言えない。
うーん、困った困った、もう寝よ。

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2004年12月2日

私の好きな武田百合子

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師走になったのでそろそろ今年一年を振り返ってみたい。今日は今年出会った作家を取り上げることにする。一番心に残った人は武田百合子である。私のプロフィールの好きな人欄にある方のことである。

ロシア旅行の前に紀行文でも読んで少しは勉強しようと思い、新聞の読書欄でたまたま見かけた「犬が星見た―ロシア旅行」を手に入れた。読み始めてすぐに、これはいわゆる現地情報を仕入れるための旅行記としてはあまり役に立たないことに気が付いた。まるでおとぎ話のような旅行記なのである。非日常がくつろいだ日常のように翻訳され、ツアーでたまたま居合わせた人々は、家族のようにやさしい眼差しで描かれている。行く先々に形成される著者の私的空間が、読者の周囲に立ち現れ、沙漠のような異郷が身近な場所であるかのようで、その土地に親しみを覚えてしまうのだ。

長く旅行をしていると、普通の(こんな辺境を旅行していること自体は、普通とはいえないのだが)旅行者と違うレベルで旅行している人にごく稀に出会う。彼らの特徴は、いつもそうしているように朝食を取り、人々と関わり、子どもをたしなめたりすることである。見かけは大抵の場合、人種的に旅行者と判るが、振る舞いが現地に馴染んでいるのである。現地に馴染んでいるような、人々に愛されているような旅行者は大勢いる。そのような旅行者と彼らは違う次元であるということを念押ししておきたい。旅行慣れしているとか、何年も海外生活をしていたとか、文化人類学に興味があるというのも、ほとんど彼らの性質とは関係ないのである。

今までどのように周囲と関わりながら生きてきたのか?そのような人に対して、私はとても惹かれてしまう。武田百合子とはそういう人だ。

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2004年12月1日

無聊写記をリニューアル!

三連ドア
本日、デザインを一新!というほどではありませんが、リニューアルしました。最近、すばらしい記事・デザインのブログを運営している方々から、リンクしていただいた上に、お褒めのことばまで頂戴したりで、私は自分のブログの拙いレイアウトをかなり恥ずかしく思っていました。とりあえず少しは見れるものになったかな?と思うのですが、いかがでしょうか?

おかげさまで、開始後ひと月を迎えようとしています。おかしな写真(どう思いますか?この三連ドアを!)、楽しい記事を発表していきますので、今後もお付き合いの程をよろしくお願いいたします。また、リンク、TB、コメントを頂いた方々に、あらためて感謝いたします。

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