『料理』 の記事

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2005年11月8日

オリーブ収穫!

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我が家にはオリーブの鉢がふたつある。このブログにも何度かご登場しているKさんに、その昔頂いたのだ。Kさんとは、私の服装にケチをつけ、クライミング・パンツに「勝負服!(>> 関連記事)」と屈辱的な命名をしたり、トイレット・ペーパー論争!(>> 関連記事)を長年にわたって繰り広げてたりしている、我が宿敵とも言えるような、油断がならないお方である。そんなKさんではあるが、お優しいところもあり、このオリーブの鉢は誕生日に頂いたものなのである。

このふたつのオリーブの鉢だが、それぞれ品種が異なる。「レバニロブランコ」と「ミッション」という品種である・・・・・・品種名が間違っているといけないと思い、念のため、Yahoo検索で調べてみた。「ミッション」という品種はあるので正しいようだが、「レバニロブランコ」と思っていたのは「ネバディロ・ブランコ」が正しいようだ。

さて、このオリーブだが、昨年から少し花が咲くようになり、今年の初夏には多くの花が咲いた。花は房状に咲き、白く小さくかわいらしかった。花が散ると結構が実が付いていた。Kさんによると、オリーブは異なる品種から受粉しやすいので、「ミッション」と「ネバディロ~」のふたつの鉢を隣り合わせておいた方がいいよ、と教えてくれた。結構な数があった実は、残念ながら、ほとんど風雨で落ちてしまったが、3つだけは生き残り、10月末にはグリーンから小豆色に実の色が変化しはじめた。ようやく頃合いだと思って、先週収穫に及んだのである。

収穫できたのはたった3コの実ではあるが、適当にスパイスを調合し、塩漬けにしたら、美味しかろうと思って、インターネットでレシピを検索した。そのとき初めてわかったのだが、オリーブの実は渋みが強いため、渋抜きに苛性ソーダに1日ほど漬けてから、塩漬け等にするのだそうだ。苛性ソーダは薬局で購入出来るらしいが、なんだか急に敷居が高くなってしまった気がして、美味しい塩漬け計画は諦めることにした。

では、3コの貴重なオリーブの実はどうなったのかというと、きれいな小皿にのせて我が家の食卓の装飾となっている。なかなかいい感じである。塩漬けの方は、来年10コ以上の収穫があれば、再度挑戦してみることにしよう。

今日の写真 ~カラフル その11~
近所の工業地帯にあるカラフルなドラム缶達。なんでこんなに色々な色で塗られているのだろう?缶ジュースと同じようにドラム缶にも様々なパッケージ・デザインがあるのかもしれません。空き缶コレクターは結構いるかもしれないけど、ドラム缶コレクターはいないんじゃないか。どなたか挑戦してみては。

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2005年9月4日

ちょっと変わり種ピクルス3種

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最近出会ったり、教えてもらって作ってもらったり、解釈して作ったりした少し変わり種ピクルスを3種ご紹介。

■オクラのピクルス

水道橋から神保町の交差点へ行く途中の白山通り沿いにヴェジタリアンPART2というレストラン(どちらかというと食堂)がある。ワインのつまみに頼んだ料理の中に、ピクルス盛り合わせがあり、キュウリや人参、パプリカ、大根などに混じって、縦切りのオクラが目に止まった。なかなかの味で見た目も良いので、今度マネして作ってみようと思っていた。するとオクラはスーパーで一袋100円もしないで売っているので、早速作ってみた。

hyodo’s recipe
オクラ(15本くらい)は1分茹でる。甘酢は米酢100ml、水100ml、砂糖大さじ2杯、塩小さじ1/2、胡椒粒、ローリエ。冷蔵庫で保管。オクラの鮮やかな緑は抜けてしまうが、見た目(必ず縦切り)も歯応えも良い。

■ミョウガのピクルス

先日、施主からミョウガをスーパーの小袋一杯頂いた。この方の庭は広大なので先日は谷中ショウガを、春先にはふきのとうを頂いたのだが、ミョウガも大量に採れるのだそうだ。味噌汁の具やソウメンの薬味だけではとても消費出来そうにない量だったので、どのように調理すればいいかな?と内心思っていると、それを察してくれた奥様が「甘酢に漬けるのよ、ラッキョウみたく。ビールのおつまみにそれはそれは最高なのよ!」とレシピを伝授してくれた。家に帰って、母にミョウガを渡し、「甘酢に漬けると旨いらしいよ」告げると翌日ピクルスになっていた。

Recipe of hyodo’s mom
母によると甘酢の割合は米酢4に対して砂糖2、塩1でミョウガを漬けたとのこと。しかし、水で割った方がいいかもしれないと申しておりました。香りと色が良いちょっと贅沢な気分になれるピクルス。

■ゴーヤのピクルス

新聞のお料理ページにレシピが載っていて、かなりおいしそうだったらしい。記事を読んだ母がゴーヤを買ってきて、ピクルスにしといてくれと言う。どうやって作るのか?と尋ねると、ゴーヤを半分に切って種を取り、5ミリくらいにスライスして、塩もみして、甘酢に漬ければいいのだと言う。甘酢は火にかけるのか?と尋ねると、その必要は無いようだと言う。とにかく言われるままに作ってみた。

Recipe of mom whom hyodo interpreted
ゴーヤは縦に半分に種を取り、厚め(5ミリ)にスライスし、塩を軽くふってしばらく置いてから甘酢に漬ける。甘酢は米酢100ml、水100ml、砂糖大さじ2杯、胡椒粒、ローリエ。冷蔵庫で保管。苦みと渋みがトースト(8枚切)になぜか合う。

参考記事
自転車でおいで>>時間との闘い

今日の写真 ~カラフル その4~
キルギスの首都ビシュケクの中心地アラ・トー広場のライトアップ。この建物の向かいには歴史博物館があり、その前にはこの夜景を背景に写真を撮ってくれる屋台がたくさんあり、多くの人々でにぎわっています。写真屋同士で写真の背景にするために協力しあっているのか、この建物の近くには人がいません。

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2005年8月24日

8枚切りのトーストが好き!

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困っていることがある。食パンの厚さのことである。我が家では8枚切りをトーストにしているのだが、近頃あまり置いていないのだ。グローバル化が進む世の中において食パンは6枚切りか4枚切りなのである。その証拠にグローバル化の最前線とも言えるコンビニ(近所のミニストップ)には6枚切りしか置いていない。またパン専門店においても同様の状況が常態化しており、川口そごうの中のポンパドールでは8枚切りの数が少なく、売り切れの場合がよくある。しかし6枚切りは売り切れていることは少ない。一番良く買うパン屋「デイジィ」にはその昔4枚~8枚切りまで1枚刻みで食パンが揃っていたが、今では7枚切りは注文となり、8枚切りも2斤くらいしか並んでいないので、無くなってしまうことが多く、しばしば切ってもらっている。

この「デイジィ」というパン屋だが、その昔「イギリスパンの店 デイジィ」と店の紙袋に文字を入れていた。角食パンとイギリスパンの両方が4枚~8枚切りまで1枚刻みで店頭に並んでいたほどで、8枚切りもたくさん店頭に並んでいた。逆に4枚切りは少なくしばしば切ってもらう必要があった。イギリスの朝食で出されるトーストは8枚切りより薄い。おそらくデイジィの食パン担当者はイギリスかそれに近い環境で修行をし、トーストは薄いものであると教えられたと思われる。しかし山崎パンの「ダブルソフト」がヒットした影響からか厚切りトーストが主流となってしまい、8枚切りが日本の広範囲で売れなくなってしまった。刺身や肉と同じように厚みのある方がリッチな感じがするからであろうか?

我が家も以前は6枚切りを、時には4枚切りをトーストにしていた。しかし家族でイギリスへ旅行したとき、薄いトーストの利点に気が付いたのである。ホテルやB&Bの朝食で供されるトーストは薄く、8枚切りどころか10から12枚切りサンドイッチ用かと思える薄さで、それがトーストラックというCD立てみたいなもので出される。このトーストラックの軽さとトーストの薄さが、朝食という、ともすれば体のために良いという名目で「起きがけの重労働」になりがちな行為を、庭の水撒きか散歩程度の息抜きにしてくれるのだ。大きな皿にトーストが乗っていればそれだけでお腹いっぱいだろうし、厚みがあれば大口を開け無ければならない。

それからというもの我が家の朝食のトーストは8枚切りとなった。ただし薄いトーストは、しっかりとしていて美味しいパンでないと旨くない上に、近頃ではあまり売っていなかったりするのである。困った、困った。

今日の写真 ~カラフル その2~
世田谷美術館の中庭です。ある展覧会でのインスタレーション。アーティストの名前は忘れてしまいましたが、カラフルなテーブルクロスをかけるだけで新しい空間が出現したのに驚きました。

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2005年7月31日

ベリー生活!!お化けのシフォンケーキ その3

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さて、前回の記事では桑の実ジャムを大量に作って大いに楽しんだ、というところまで話した。いつも通りそのジャムでシフォンケーキを焼いてみた。レシピは「無聊写記」ではお馴染み赤堀レシピ。詳しくは「しっとりシフォンケーキ―」を参照。

黄身と砂糖を混ぜ、オレイン油を加えて混ぜて乳化し、桑の実ジャムを入れると生地はドス黒く変色し、薄力粉を混ぜても黒々としていた。さらにメレンゲ(赤堀レシピでは柔らかめに、そして手で泡立てることを推奨している)と混ぜ合わせてようやく紫色に判別出来るようになった。170℃のオーブンで38分。焼き上がったら4時間くらいは型を逆さにして冷ます。

十分冷めてから型抜きをして、一切れ切り分けてみる。切り口をみてびっくり。具合の悪い人みたいに緑がかった青で、まるでアザのような色。くすんで精気がない感じでおいしそうに見えないどころか、むしろまずそう。

このシフォンで茶会をシミュレートしてみる。(シフォンケーキ茶道編を参照)

hyodo :お菓子をどうぞ
正客 :夏に焼き菓子とはお珍しいこと(イジワルな質問)
hyodo :季節の果物が入れてみました。
正客 :何かしら?
hyodo :切り口をご覧くださいませ
正客 :このお菓子、青ざめていますね
hyodo :涼を表してみました。
正客 :しかしなんと見栄えの悪い・・・・・
hyodo :でも美味しいでしょ!
正客 :ええ、まあ。ご銘は?
hyodo :『お化け』でございます。
正客 :・・・・・・・・・・

と言うわけで「お化けのシフォンケーキ」と銘を付けた。味はいいのだが見た目があんまりだ。今後の改良点としては、型に生地を流し込んでから桑の実ジャムを垂らしてみようと思う。そうすれば切り口にはマーブル状に綺麗な紫が見えてくるはずだ。

私のベリー生活はひとまずおしまい。この週末群馬の山奥へ野いちご摘みに行く予定だったが私情でキャンセルしてしまいとても残念。昨日仕事で佐原へ行ってきたのですが、伝統的建築物保存地区でたわわに生っているブラックベリーを発見したのはその無念からかもしれない。そこで立ち寄ったカフェしえとは古民家をリノベーションしたオシャレなカフェ。オススメです。

今日の写真 ~Underconstction その3~
今日も中華圏の竹の足場。どんな形の建築物にも対応。場所は香港。

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2005年7月18日

ベリー生活!!お化けのシフォンケーキ その2

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さて、母と私は渡良瀬遊水池内の谷中湖近くの公園に到着すると、雨合羽を着てポリバケツを持ち、雨の中桑の木が生い茂る湖畔を目指した。平日雨、しかもだいぶ降っているというのに、そこには桑の実摘みに馳せ参じた同志たちがチラホラと見受けられた。「ソフホーズでの収穫!」何の脈絡も無いが、突然脳裏にこんな言葉を思いついた。この広大で無機質な風景がソビエトの国営農場を連想させたのかもしれない。見たこともないのに・・・・・。

まずは実のなり具合を確認。雨が続いていたせいか、あまり良くは無いがどんどん摘む。桑の実は熟すと全体が黒っぽい紫色になり、軽く引っ張るだけでぽろっともげる。赤い実は未熟で相当強く引っ張っても採れない。上を見上げて実を摘んでいると、木の下とはいえ雨が顔にまともに当たり結局全身びしょぬれとなる。それでもめげずに湖畔に沿って歩きながら摘むこと3時間、ポリバケツ1杯、約3kgの収穫。湖畔でお茶を飲んで少し休む。

夜に帰宅して早速ジャム作り。桑の実1kg当たり砂糖400g振りかける。軽くヘラで混ぜる。砂糖にまぶされた桑の実をつまむ・・・・・・旨い!20分ほど火にかける。味見・・・・・・旨い!最後にレモン汁をかけて色止め(になるかどうかは不明)。黒に近い濃い紫色がキレイ。翌朝、カスピ海ヨーグルトにかけて食べる。8枚切りトーストに乗せて食べる。牛乳に汁だけ垂らして飲む。そのままスプーンで舐める。生食で食べる。・・・・・・などなど hyodo家は幸福な日々を迎えたのであった。(つづく)

今日の写真 ~Underconstction その2~
有名な中華圏の竹の足場。これくらい大規模になると美しいです。場所はマカオ。

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2005年7月14日

ベリー生活!!お化けのシフォンケーキ その1

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心が荒んでいるのか?身体が錆びているのか?世に擦れているのか?

私は荒涼とした景色が好きである。シチリアやエーゲ海の島々、アナトリアの乾いた山、イエメンの広大な渓谷、ウズベクのホラムズ地方、日本では根室半島の平原と強風で枝が曲がった木々の風景、九十九里浜etc…特に見るものもなく焦点の定まらない変化に乏しい風景を見ていると心が落ち着くのである。

ホンマタカシがアイスランド・レイキャビクの郊外を撮影した「Hyper Ballad」、松江泰治が世界各地の地表を薄墨のように表現した「HYSTERIC」。どちらも主たる撮影物は無く焦点の定まらない茫漠たる風景写真集である。衝動買いをしない私としては珍しく手に取った瞬間にレジへ走ってしまったほどこれらの作品には魅了されてしまった。建て売り住宅で構成された郊外の街に育った私(達)が持つ原風景には本質的に美というものが無い。それ故に空虚な被写体をホンマや松江によって美しく表現してもらうことで自分の子ども時代も美しいものとして記憶が書き直され、嬉しくなるのかもしれない。「私(達)が育った住宅街も満更でもないな」と。そして、
エドワード・ホッパー。一見弱く感じる表現の絵の中に冷めた風景や淋しげな人物の佇まいを観て「私の生活も満更ではないのかもしれないな」と少し安心し、慰められるのかもしれない。

そんな感じの風景を見ることができる場所が私の住まいから比較的近い場所にもある。茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県の4県の県境にまたがる渡良瀬遊水池である。この遊水池の概要はリンク先をみていただいた方がわかりやすいので省略させていただき、私が受けた印象だけを語ることにする。

初めてここを訪れたのは大学生のとき。プリメーラが納車したばかりで嬉しかったのか家族で利根川周辺をドライブしていた。するとスカイダイビングをしている人が上空に見えた。着地点を追って行ってみた先が渡良瀬遊水池内の広場だっのだが、とにかくものすごい広さで一面アシ原で北海道の釧路湿原を思い浮かべるほど。しかし釧路湿原と大きく異なるのは、ここは洪水対策のために造られた人工環境であること。遊水池域内には「超流堤」というアスファルトの巨大な堤防があり、これを初めてみたときは、人気のない校舎にひとりいるときのようで、その不気味さにぞっとしたものである。私が心惹かれたのはこの広大な人工自然環境と巨大な構造物との対比とこれらによって構成される茫漠とした風景である。

写真をいくつか紹介すると
枯れたアシ原
池内水路
池内道路
池内公園の駐車場
調整池谷中湖周辺
池内公園のバーベキュー小屋
緑のアシ原
超流堤
こんな感じである。

さて、渡良瀬遊水池の楽しみは風景だけでなく他にもある。5月下旬から6月初旬にかけて桑の実が採れるのだ!桑の実は熟すと黒に近い紫色の小さい房の集まったラズベリーのような果実で、甘さも酸味が強い。英語では “mulberry” というから苺(strawberry)やスグリ(gooseberry)などのようにベリー系の果実なのであろう。昨年母とふたりで立ち寄ったときに、桑の実摘みをしている人たちを見かけたので、真似をしてビニール袋一袋ほど採ってみた。持ち帰って食べてみると生食でもジャムにしても旨く、ジャムにしたときの果汁の色がブルーベリーのように濃く美しいので、すっかり気に入ってしまった。もっと摘んでくれば良かったと後悔した。そんな訳で今年は収穫の日を指折り数え準備にいそしみ、「庭木のオリーブの花が散り始めたから、渡良瀬の桑の実はそろそろではないか?」とか「浦和の麦畑がまだ収穫してないからまだ早い」とか周囲の植生状態にも気を配って時期を探り、ポリバケツなどの装備を用意し、仕事のスケジュールを調整し、万全の体制を整えた。決行の日、天候には恵まれず雨が結構降っていた。そこで雨合羽を2着急遽装備に加えて、体制をより頑固なもへグレードアップした。そして燃費装甲車プリウスを駆り、桑の生い茂る遊水池の岸辺を目指したのである。(つづく)

今日の写真 ~ソフト・ハウス その8~
サンクト・ペテルブルグはネヴァ川沿いのカフェ。建築的にもデザイン的にもなかなか良くできている。ソフト・ハウスの写真は今回でおしまい。次回のシリーズもお楽しみに!

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2005年6月21日

シフォンケーキ・官能篇

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ふた月ほど前に大量に夏みかんシフォンケーキを焼きすぎたせいか、最近あまり焼いていなかった。ゴールデンウィーク明けに、キルギスの友人を夕食に自宅へ招いたときに1ホール焼いただけである。

「さすがに夏みかんシフォンも飽きてきたのだろうか?」 私は想いを巡らす。
「それともシフォンそのものに飽きてしまったのでは?」 私は独り苦悩する。
「もしかして人生に飽きてしまったとか?」 私は世に問いかけ、神を求める。

しかしここで崇高で形而上学的な問題は妄想に取って代わり、それは膨らんで、飛躍し、ついには官能の世界を逍遙するのだった。ではそこから閃いた妄想的官能フレーバーをご紹介しよう。

このあいだTSUTAYAの半額デーに「髪結いの亭主」(1990仏 パトリス・ルコント)という映画をレンタルして鑑賞した。簡単にストーリーを説明すると、女性理髪師の官能に子どもの頃から恋いこがれていた男アントワーヌは、理髪店の美女店主マチルドに一目惚れし、求婚して結婚し、ひたすら彼女を見つめて暮らし、彼女もそれに満足しているのだが、老いを怖れたマチルドは、ある日死を決断するに至る・・・こんな感じなのだが、ルコントの作品には相手を愛するがあまり、不幸(至福?)に落ちる、しかも外的要因に巻き込まれて仕方なくというのではなく、内的要因で自発的にそうなってしまう話が多いような気がする。

映画の最後の方で、マチルドが散髪している客の「死の匂いとは?」という問いに対し、アントワーヌが「バニラ風味のレモンだ」と答えるシーンがある。このやりとりの後、マチルドはその客が年をとって背が曲がってきたことを自分の老いに照らし合わせ、死を決断をする、という重要なシーンなのだが、私はこの「バニラ風味のレモンだ」の台詞がすっかり気に入ってしまった。バニラもレモンもどちらも大好きな思い出深い香りだが、子どもっぽい香りだなとも思っていた。しかしこれらを合わせると死の匂い?否、この映画では官能の匂いと解釈すべきであろう。マチルドは死だけを決断したわけではないのだから。そこで早速バニラ風味のレモンシフォンを焼いてみることにした。

シフォンケーキは少量の小麦粉をベーキングパウダーを使わずメレンゲだけでふんわりと焼き上げるためか、強めに香り着けをしないとフレーバーが何であるかわかりにくい。そこでバニラエッセンスは30滴、レモンは半分の皮と果汁で香り着けをすることにした。レシピはおなじみ赤堀レシピを参照。映画を意識して、女性の方はマチルドの真似して胸元や腿をちらつかせながら卵を割ったり、男性の方はアントワーヌの真似してアラブダンスを踊りながら泡立て器を振り回したりしながら調理すると気分が高揚するかも(笑)

さて、お味の方はといいますと、これだけバニラエッセンスを垂らしても微かな香りしかしない。やはりメレンゲの宇宙は広大なのか(シフォンケーキ宇宙編参照)、シフォン全体に広がるようにするには天文学的な滴数が必要かもしれない。メレンゲによって薄められた官能の匂いに、そんなはずは無いと思いながら、私は更に鼻を近づけて嗅いでみるのであった。

今日の写真 ~ソフト・ハウス その5~
今回はマカオ、タイパ島。お祭りのために作られた仮設舞台だが、使用部材は中華圏の建設現場で使われている竹とシマシマ養生シート。

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