2009年2月13日

『つながる身体 伝える身体』に参加

2月11日(水)10:00~16:00、川口メディアセブンのワークショップ「『つながる身体 伝える身体』 能における身体技法」に参加した。能は昔、鎌倉のお寺での舞台に連れて行って頂いたことがあるくらいで、知識はほとんどなかったが、能の鑑賞をしたり解説を聴いたりするような勉強会とは違い、実際に自分の身体を動かして能の世界を理解・認識してみようという趣旨のワークショップで、面白そうなので参加してみた。以下、備忘録。

講師:安田登さん(能楽師:ワキ方下掛宝生流)、アシスタント:クスミさん

アプローチ1/能とは?

主にシテ、ワキからなる日本の古典芸能。シテは大抵この世の人ではない死者や精霊などであることがほとんどである。能面を着けるのはシテのみ。

古代中国の甲骨文字は、身近な動物や人の身体を表したものが多く現代の漢字のほど抽象化されていない。まだ「心」の文字はなかったので、「心」という概念が存在しなかったものと想像される。たとえば「取」という動詞は「耳」と「手」という人体の部位の組み合わせで行為を表現している(当時は耳で個人の識別をしていたようで、敵を倒したときは首を取るのではなく、耳を切ったらしい)。こういったことから、当時はさまざまな事象を概念(心)ではなく、もっと身体に近いところというか体全体で読み取っていたのではないのかと思われる。(甲骨文字の成立より能の成立はずっと後の年代であるが)能は概念ではなく体で感じる行為である(安田さんはもっとわかりやすく良いことをおっしゃっていた)。

アプローチ2/ロルフィング

―実験1―

  1. まずできるだけ前屈をする。>僕は体が硬いので床に手が着かない。
  2. 横に人に立ってもらって、片手をその人の上腕に添わせながら前屈をする。>最初より曲がる。床に指先が着く。
  3. 2と同時にティッシュを撚って奥歯で噛みながら前屈をする。>さらに曲がる。
  4. 隣の人の上腕に片手を添わせているイメージで、奥歯でティッシュを噛んでいるイメージで前屈をする。>イメージするだけで曲がるようになる。
  5. 更に前屈しながら人差し指を動かしてみる。>まだまだ曲がる。

この実験は体が硬い僕にとって結構驚きだった。体が硬いということは、脳と筋肉の情報のやり取りが十分に出来ていないからであるということは知っていたが、ある行為やイメージを加えることにより、脳と筋肉のネットワークが強化されるようだ。

―実験2―

能において、腕とは肩甲骨、胸骨及びまわりの筋肉も含む範囲である。足とは大腰筋の始まる腰の部分を含む範囲である。そのことを意識しながら力を抜き、振り子のように腕・足を振ることにより、肩甲骨の筋肉・大腰筋が緩み、腕・足が長くなる。大腰筋が緩み足が長くなった状態で歩くと、左右の足の長さが同じではなくなるので、少しの間、歩くと変な感じになる。

能で使われる楽器

囃子は舞台正面右から、笛、小鼓、大鼓、太鼓の順で並ぶ。横縦横縦という並び方であり、陰陽にも即している。囃子とは「生やす」の名詞系「生やし」が語源で、舞台を活性化する役割を担い、演奏することとはニュアンスが異なる。能で使われる笛(能管)は見た目は雅楽で使われる竜笛に似ているが、メロディーを奏でる楽器ではない。能管は息を強く使い、運指は「指を打つ」といわれ、管楽器ではなく打楽器として使われ音階も無い(実際には音階はあるが意識されない)。また倍音が出にくい構造になっており、音階が意識されないが故に謡(うたい)との調和が図れる。能管には「ひしぎ」という音がある。「ひしぎ」とはこの世あの世の境界を破壊しつなげる音の意である。

能の呼吸

―実験1―

意識的に「はき」、自然に「すう」を繰り返す。なれてきたら軽く声帯を鳴らすように声を出しながら「はく」。

「呼吸」とは、「はいてすう」ことであり、能において一番大事なことである。特に「はく」ことに注意する。激しい運動の後で息が切れるときには、吸い込むことに注意を向けがちであるが、十分に息をはいた方が呼吸が整うまでの時間が短い。その証拠に海女(アマ)は長時間海中に潜ってから海面に顔出して最初にすることは、息を吸うことではなく「はく(”口”偏に”つつみがまえ”の中に”口”と書く。この漢字はSJISやUnicodeには無い」。呼吸は普段は無意識にされているが、コントロールすることもできる。自分の行為において意識して行ったことは自分の意思だが、無意識になされることは神の意思である、と昔の人は考えていた。能では意識と無意識の中間、覚醒と睡眠の中間を目指す。

―実験2―

新聞紙を破る。左手に持って垂らした新聞紙を「ハッ!」など大きな声を出しながら右手パンチで突き破る。体を動かすということは、引く筋肉と伸びる筋肉があるということである。声を出すことにより伸びる筋肉のブレーキを外しより早く腕が動作する。
YouTubeで近い映像を見つけました > http://www.youtube.com/watch?v=jv35J8_rwQI

摺り足

大腰筋をまず意識する。内部の筋肉を使うには、ゆっくりと小さく動いてみる。うまくいかないときは胸骨を広げるように。後頭部も意識して頭の位置を確認。

能鑑賞

安田さん、槻宅さん、水野さんによる小作品の公演。題目「道成寺(一部)」、「夢十夜 第一夜」、「夢十夜 第三夜」、「吾輩は猫である(猫が餅を食べるシーン)」

感想

昼休みを挟んで6時間にもおよぶワークショップでしたが、最後まで大変楽しめました。定員30人のところ55人が参加したそうで、大盛況でした。その55人は5グループ11人ずつに分けられたのですが、僕が入ったグループには川口市民は僕ひとりで千葉や東京の遠方から参加した方が結構いました。ひとつの市では、これほどよくできたワークショップでも人を集めるにはなかなか大変なようです。


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カテゴリー:アート |  コメント (2) |  投稿者:hyodo

コメント


Takuma.S

はじめまして。
私もワークショップに参加しておりました。
よい体験だったので、自分なりにまとめようとして、
どこかに当日の進行表はないかしらんと探していたら
hyodoさんのブログにたどり着きました。
ブログを拝見しているうちに、鮮明に思い出すことが出来ました。
ありがとうございます。
能という世界を垣間見たのもよい体験だったのですが、安田先生の進行が見事なのも思い出しました。
先生方の公演中も、
「お、あの先生の動きは月を抱えているのか」
「あの鼓が50年後に音が出る、というやつなのかな」
などなど、ワークショップの内容が活かされており、充実した時間を過ごす事が出来ました。
長くなりましたが、ワークショップの備忘録、ありがとうございます。

2009年2月17日 @ 11:34 PM


hyodo

Takuma.Sさん、こんにちは。
このワークショップは楽しく良い体験をさせていただきましたよね。さまざまな興味ある小話などはもっともっとあったと思うのですが、思い出せないのもあって残念に思っています。最後の公演に安田さんが選ばれた題目も本当に興味ある、素晴らしい舞台でした。
メディアセブンもかなり気合を入れていたイベントだったようなので、大成功でしたし、第2弾に期待しましょう!

2009年2月18日 @ 9:37 AM

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